キノコノハナシ

夏から続いる天然キノコ。

9月の中過ぎぐらいから、雑キノコ達がとても元気です!雑キノコとは、主要な秋キノコ以外のその他大勢の事を差しますが、明確な区別がある訳でもなく、松茸、舞茸、香茸、本しめじ、ロウジ(クロカワ)以外を雑キノコと言ってる様な気がします。ゴッチャポント的にはヤマドリタケやアカヤマドリのイグチ科のキノコたちと、タマゴタケも「雑」とは呼びたくないなぁ...と言う事で、夏キノコは正式名称で呼ぶ事が多いです。

秋の雑キノコが入荷して来ると、スープがようやく始まります。なんとなくですが、この天然キノコのスープが始まると「キノコ最盛期!」と嬉しく思いつつも、「あともう少しだなぁ...」と、両方の気持ちが入り交じり、ちょっぴりセンチメンタルな気持ちになります。

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(↑イボイボが特徴な香茸に、シャカシメジ、ピンクのサクラシメジ、奥はハタケシメジに、チラチラっとアカヤマドリやチチタケ。)

キノコを上手に掃除するとコロンコロンとかなり可愛い仕上がりになります。それが嬉しくてドンドンその作業を進めると、ムクムク湧き出て来るヘンな達成感。終わる事にはかなりハイになってます(笑)。

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(↑キレイになったハタケシメジちゃん。こうやってキレイになると、ついそれを保存したく=写真を撮りたくなります。)

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(↑クリフウセンはバターの香りがあって、好きなキノコ。この小さなキノコたちはスープに浮かべても可愛いので、余計に丁寧になってしまいますね。)

そんなこんなで、こんな事ばかり繰り返しているうちに時は過ぎて行き、もうすぐ来年までのサヨナラかぁ...なんて思うと、うっかり遠い目をしてしまいます。(←ほとんどビョーキ!笑)

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(↑香茸はすごく香りが良くステキなキノコなのですが、そのままでは苦みがあります。その苦みを天日干しで飛ばして、冬の保存食に。寒い時期、乾燥香茸を戻して炊き込むゴハンは最高のご馳走なんですよ〜!)


そんな天然キノコたち。

まだまだ研究がされてないって知ってました?世の中にコレだけたくさんのキノコがいて、栽培物がまだ数種類しかないのも、よく考えたらヘンな話ですものね。野菜や果物はあんなにもたくさん栽培されているのに。

実はキノコって、研究したいと思った瞬間にやらなければならない事の多さに気付いて、あきらめちゃうんですって。ええーっ!?研究ってそんなもんなのっ!?と思ったのは私だけじゃないはずっ!!(笑)でも、よくよく考えてみれば、キノコはそのキノコを取り巻く「環境」というのがあるから、キノコを調べるという事は環境を調べるという事になりますし、さらには胞子が落ちた場所や、そこに生えている植物やら、何に寄生しているかとか、場所が変われば名前も毒性も違ったり、生育段階での容姿も違うし、何よりも胞子が目に見えないってのも、素人目に見ても難しさを助長してる気がしてます。

それでも今は少しずつ研究が進んでいるようで、いろんなキノコの栽培が可能になっているニュースを見ます。少し前かな、光るキノコのヤコウタケ栽培キットなるものが発売になって、ちょっぴり欲しくなった覚えがあります(大人なので買わなかったけど!笑)。

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(↑ナラタケ、ニンギョウタケ、ハナビラタケ。ナラタケの細い軸だって、1つ1つ丁寧に拭き上げます。出来るだけ生えていた形を損なわないように...なんて考えていたら、そりゃ愛着わくってもんですよね〜〜〜。)

個人的な意見ですが、天然キノコを頂くと体の中がかなりスッキリします。この時期は私自身も好きなのでキノコを頂きますが、体の中がクリアになる感じを受けるんですよね。春の山菜もそんな感じがありますが、春の山菜は「何から何までスッキリ出す!夏と秋に向けて軽やかに体を動かす為に全部出す!」って感じなのに対し、秋のキノコは余分な物を体の外に出して「良い物をためる(=冬に備える)ための体を作る手助け」をしている感じがあります。余分な物が出た場所に良い栄養素を溜め込む...みたいな。あ、これはものすごく個人的な意見ですけど。

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(↑アミタケは茹でると↓みたいになります。)

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(↑ぬめりが合って、味よりも食感が楽しいアミタケ。鍋に入れると美味しいんですよ〜〜〜。)


基本的に、野草やキノコは薬のために研究される事が多くいようです。薬の為って聞くだけで毒と薬は紙一重って感じがしますよね。織田信長の時代には薬だけでなく火薬の為にも伊吹山で野草の研究させていたとも言われてますしね。結局は全てが自然の中にある物ってことですね。

ただキノコの研究を支えているのは研究者ではなく、キノコ愛好家の方達が多く、山に入る愛好家さんたちのその報告が研究の役に立っている場合も多いそうです。

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(↑天然の舞茸はアジメドジョウと一緒にフリットに。シンプルですが、舞茸はこれがイチバン美味しい気がしてます。)

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(↑生き生きしてる舞茸さん。)

キノコも含まれる菌類の研究はまだまだ始まったばかり。ここ20年ぐらいで大きくその常識が変わっています。私たち(昭和生まれ)が学校で教えられたことは、今では過去の事になっていて、菌は「共に生きる生物」で、健やかに生きる為には必要不可欠なものと認識されるようになりつつあるようです。(....あぁ、かなーりザックリな表現ですいません!)

私たちの体の中には無数の菌達がいて、私たちは自分できないことをその菌にやってもらうことで生きてます。協力してもらっている反面、菌達も私たちを利用して生きてます。腸内の菌達がその人の人格を形成しているのではないかとか、菌達が脳に指令を出しているのではないかとも言われていたりと、知れば知るほどに、人間の体って自然界にある物で構築されていて、「す、すいません!いつもお世話になってます!」感が強いなぁ...と思うのですよね(笑)。昭和の「人間が生き物の頂点的な考え方」で育った私としては、本当にゴメンナサイ!状態。自分の体を若さに任せて駄々草にしてしまったあの頃(=毎晩飲んだくれていた)を思うと...、あぁ、体内菌活、やり直せるならやり直したいっ!!


....と脱線しましたが(汗)。

自分で採りに行かれるんですか?って聞かれる事がありますが、いえいえ、私たちは採りには行きません。山に入っても知識がないので、いつも山を大切にしている信頼できる方に送って頂いてます。

山菜でもそうなのですが、その山に入る方たちとのやり取りがとても勉強になります。冬の間の雪の降り方や生き物の状態から始まり、春の山菜がどんな感じで進むか、それによって夏がいつ来るかが分かり、梅雨時の気温と雨の降り方を感じつつ、同時に夏キノコの発生を待ち、夏の気温次第で秋キノコを予測して...と。1年通して山が教えてくれる事が多いのです。

そして、そのキノコ採りさん達自身がどんな風に食べているかということが、私たちがどんなお料理にするべきなのかというヒントになりますし、どうしてその食べ方をするのかということを考えると、そのキノコを採って食べる理由や良さを知る事が出来たりと、本当に面白いです。

そしてこのキノコの季節が終わり冬になると、寒さから防寒したり発熱するための食材が恋しくなり、それには消化を助ける野菜がとてもよく合います。こうやって食材を季節で追っているだけでも、そういうことなのかぁ...と思う事がいっぱい。

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(↑真黒なロウジはクロカワとも呼ばれている苦みのあるキノコ。このロウジの苦みはお肉と一緒に頂くととてもよく合います!)

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(↑放牧豚にロウジを添えてます。ロウジは松茸の後に生えるキノコで、この苦みと旨味は「松茸に飽きた人が食べるキノコ」として愛されているようです。)


まだまだ知らない事が多い私たちは、本当にありがたいことなのですが、こうしてたくさんの事を教えて頂いてます。根本に近い事を教えて頂いて知ることでより美味しく、よりそのものらしく料理にできそうな気がしますし、何よりも「大切に使おう」「しっかり美味しくしよう」と思いますし、その先に自分たちで考えた事を表現したいとも思ってます。

そして、いろんなことを知る事は必要以上に欲しがらないということへも繋がります。山だけでなく、天然鮮魚を始めとする海もそうなのですが、必要以上に欲しがる事は枯渇する事へ繋がります。未来へ少しでも残せる様な仕事をしない限りは、私たちの後を生きる人たちに何も残りません。

知らないでいい事も多い世の中ですが、しっかり知る事で自分自身が考えて選ぶキッカケになると感じる事も多いので、まだまだ、私たちの知りたい欲求は続きくような気がしてます。

またいつか、ゆっくりと語れればいいなぁ...と。


かなりな長文なキノコノハナシ、最後まで読んで頂いてありがとうございました!!



by gcpt | 2018-10-01 10:54 | お料理(食材)のコト

楽しい料理と自由なワインのある草食系食堂ゴッチャポントです。ブログではディナーでお出ししている食材やお料理を中心にご紹介してます。


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